先生なんて言わせない

「…あ、はい。すみません」



佐野先生がすごい勢いで怒鳴るものだから、なんだか悪いコトした気分になって、肩をすくめた。



「いや、怒鳴って悪かった。行くぞ」


佐野先生があたしを支えてくれて、一緒に歩き出した。



樋渡さんはそのままそこで立ちつくしている。



彼女が一言もしゃべらないことを不思議に感じ、チラッと見ると、

その瞳は燃えるような怒りを現していた。



――怖い。


いつもならあたしと佐野先生の間に無理やりにでも割り込んできそうな彼女が、

ただ静かに怒っている。



それがなんだかとても怖く感じた。



何を考えているの?



佐野先生を好きって言ってた。


だから、佐野先生にかまわれるあたしが許せないの?

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