先生なんて言わせない
じわじわと胸に広がる不安でいっぱいになりながら、保健室にたどり着いた。
「痛ッ…」
あまりに痛くて、思わず声が漏れた。
「我慢しろ。女の子なんだから、痕なんて残したくないだろ?」
佐野先生はそう言って、容赦なく消毒液を染み込ませた脱脂綿を傷口に押し当ててきた。
保健の先生が外出中だったので、佐野先生から治療を受けていた。
「よし、終わった。歩けるか?」
「はい、大丈夫で…」
あたしはそう言いながら立ち上がろうとして、顔をしかめた。
「痛むのか?」
あたしの異変に気づいた佐野先生が伸ばした腕にしがみつきながら、うなずいた。
「でも、すりむいただけだし大丈夫。思った以上に痛くて驚いたの」
笑顔を取りつくろうと、先生から離れて歩きだした。
本当はね、すごく痛かったの。
ひざ頭じゃなくて――足首が。