先生なんて言わせない

だけど、走れば走るほど、ズキズキとした不安が襲いかかり、

あたしが顔をしかめた一瞬に誰かに追い抜かされた。



相手の背中を見ると、ゼッケンには3年1組と書かれていた。


よりによって、3年1組の人に――。



あたしのせいで、負けるかもしれない。


優勝も無理かもしれない。



あたしは絶望感に包まれながらも、懸命に走り続け、2位でゴールした。




――負けてしまった。



呆然と立ちつくしていると、樋渡さんが駆け寄ってきた。



「約束よ。もう佐野先生には近づかないでね」


あたしにだけ聞こえるようにささやかれた言葉に、あたしは身を震わせた。



そばにいた委員長が何か口を開きかけたけど、誰かの大きな声にさえぎられてしまった。


「高村!」


呼ばれたあたしはびっくりして、声のした方を見ると、佐野先生が大またで近づいて来ていた。

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