先生なんて言わせない
「おまえ、ケガしてるんじゃないか!? 右足をかばうように走っていただろ!?」
先生が大きな声を出した瞬間、皆の空気が張りつめた。
「高村、ケガしてるなら言えよ。誰かに代わってもらうことだってできたのに」
「だって…」
佐野先生の後に続いた委員長の言葉に、返す言葉が見つからなかった。
足は練習で転んだ時にひねったようで、シップをしていてもまだズキズキと痛む。
それなのに、どうして無理に走ろうとしたんだろう。
皆に心配かけたくなかったから?
最初はそんな理由だった気がする。
でも、樋渡さんとの賭けがあたしを引き返せない位置に立たせた。
勝ちたい。
負けたくない。
自分の力で頑張りたい。
そして、あたしは走ることを選んだんだ。