先生なんて言わせない
├ 完ぺきな女の子
保健室には誰もいなかった。
それもそのはず。
体育祭の間はグラウンドに救護テントが設置されていて、そこに保健の先生はいるのだから。
どうしてそっちではなく、こっちに連れて来られたんだろう。
疑問に思ったあたしは、連れて来た張本人にたずねてみた。
「安藤先生、どうして保健の先生いないのに保健室に来たの?」
「あ、ごめん。話がしたくて」
安藤先生がシップを張り替えた右足に包帯を巻きながら、答えた。
「うん、まぁ、手当てするってほどの大ケガじゃないからいいけど。話って何ですか?」
だけど、安藤先生は答えない。
下を向いたまま、包帯を巻き続けている。
何?
なんなの?
表情すら見えないため、安藤先生が何を考えているか、まったくわからなかった。