先生なんて言わせない
ゆっくりとした動作で包帯を巻き終わると、
次の瞬間には安藤先生の腕にあたしは包まれていた。
――え!?
あたしの顔には安藤先生の胸板が押しつけられていて、一瞬、息をするのを忘れた。
何が起こったのか理解出来ずに呆然とするあたしの耳もとに、安藤先生の声がダイレクトに響く。
「オレにしておけよ。もう教師だ、生徒だなんてどうでもいい。千沙が欲しいんだ」
その言葉を聞いて、瞳からは自然と涙が流れ落ちた。
その言葉を、あの日に聞きたかった。
あたし達の終わった、3月のあの日に。
今じゃもう遅い。
「ごめ…なさい」
安藤先生の胸を押し返した。
「…千沙?」
安藤先生の不安そうな表情に心が傷んだけど、あたしは…。
「安藤先生、あたしは――」