先生なんて言わせない
それを聞いて、樋渡さんが声を上げて泣き出した。
「…佐野先生ぇ、高村さ…のこと…好きな…?」
鳴咽の間にもれる樋渡さんの声に胸が痛んだ。
「そうだな。樋渡にはごまかせないよな。…俺は、高村のことが好きだ」
心がドキンと跳ねた。
何度も言われた言葉。
からかわれているんだと思っていた。
でも、今の佐野先生は真剣な眼差しで、嘘とは思えない。
それ以前に、教師が生徒を好きだって、他の生徒には冗談でも言えないよね?
学校にばれたら、懲戒免職モノだよ?
「まぁ、とはいえ、俺の片思いだから。付き合ってるとかじゃないし、できたら皆には秘密な?」
佐野先生は小さな子供をあやすかのように樋渡さんに言った。
「言わない。佐野先生のこと好きだから、そんなこと言えない」