先生なんて言わせない
「あたしを好きだっ」ていう言葉を。
いつからかとか、何でかとか、何もわからない。
それを信じていいのかもわからない。
それでも、あの言葉を思い出すと、心臓がドキドキする。
「やっぱり、千沙は――」
安藤先生が何か言いかけたけど、手は離れた。
次のパートナーと手を取り合う。
一体何を言いかけたんだろう。
そんな疑問も一瞬で吹き飛び、
『…俺は、高村のことが好きだ』という佐野先生の声が頭の中でリピートされていた。
何人かと交代して、やがてあたしは鷹井くんと踊っていた。
鷹井くん自身気まずさがあるのか、何も言わない。
あたしは、鷹井くんよりもその先にあるモノに気を取られていた。
――次だよ。
次の相手を意識したら、あたしの胸の痛みは最高潮に達していた。