先生なんて言わせない

次こそ。



だけど、そううまくはいかないんだね。


鷹井くんと踊っている時に曲のエンドを迎えてしまったんだ。



呆然としながら、決してつながれることのなかった佐野先生の手を見つめていた。







ショートホームルームが終わって、約束通り昇降口で佐野先生を待っていた。



「悪い、高村。待たせたな。安藤先生から車借りたから行こうか」



チャリーンと音を響かせながら見せてきたのは、懐かしい車のキーだった。


昔、何度も乗ったあの黒い車。



もうとっくに忘れたはずの感情なのに、昔には戻れないと見せつけられる度にあたしの胸は小さく痛む。



「高村、足痛いだろう? 俺を支えにしてくれていいから」


そう言って、佐野先生と今やっと、手がつながった。



その瞬間、あたしの心は大きく跳ね上がった。

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