先生なんて言わせない
「別に、構わな――」
その言葉をさえぎるように、静かな教室内にガラガラッという音が響いた。
驚いて振り返ると、そこにはドアを開けた体勢のまま息を切らした佐野先生が立っていた。
「さ、佐野先生…!?」
体育教官室で樋渡さんに勉強を教えているのではなかったのか。
どうしてここにいるのかわからず、問いかける声が漏れた。
「トイレの、くせに戻って、来ないから、捜したっ…」
その息の切れようから、走り回ってくれていたことが、容易に想像できた。
心配させてしまったんだ。
あたしは顔を青くしながら、
「ごめんなさい」と佐野先生の側に走り寄った。
「とにかく戻るぞ。勉強の途中だろ」
急に左手首をつかまれ、足早に歩き出した佐野先生に着いていく形になった。
「あっ、あの、そのことだけど、勉強は委員長に見てもらおうかと思って」