先生なんて言わせない
学校の中って安全な場所でしょ?
でも、佐野先生はそんなあたしの疑問を真っ向から否定する。
「ここにはさ、ヤリたい盛りの飢えたオオカミがたくさんいるんだよ? わかってるのか?
レイプ加害者には高校生だっているんだ。
こんな暗くなってからひとりでいたら、いくら学校でも安全とは限らない」
「ごめ…なさい…」
佐野先生のあまりに真剣な眼差しにとらわれ、謝ることしかできなかった。
「わかったら、よろしい」
コツンと額と額を合わせてくる。
その顔には、微笑みが浮かんでいて、ホッとして口もとをゆるめた。
「…と、もう18時か。勉強は明日にして、今日は帰るか。送っていくよ」
「ええ!? 先生と一緒に帰ったら変な誤解受けるでしょ?」
室内の時計を見ながら佐野先生が言ったことに、びっくりして大きな声を上げた。
佐野先生はフッと柔らかな表情になった。