先生なんて言わせない
「痴漢から守るために一緒に登校してるのは有名な話なんだし、いまさらだよ」
「あ…」
そのことに気づき、あたしはマヌケな声を出した。
そうなんだよね。
彼氏なんてできそうもなくて、佐野先生との登校を続けていた。
半年以上もその状態だから、あたし達の登校の話は全校生徒にまで知れ渡ってるかもしれない。
「遅くなって満員電車の時間になったんだから、帰りも一緒でもおかしくないだろう」
さっきからゆるんでしまりのない口もとを引きしめながら、コクンとうなずいた。
「あ、それと明日からテスト前日までの放課後はここで勉強な?」
これには大きくうなずいた。
お詫びもかねて、ごほうびは絶対あげなきゃ!
勉強を頑張ろう!!
あたしは胸の内で意気込みながら、カチャリとカギを開けて出ていく佐野先生の後を追った。