先生なんて言わせない
もしもデートしたことが学校にバレたら、きっと佐野先生はクビになる。
佐野先生はうまく言い訳する気かもしれないけど、
クリスマスに仲良くふたりきりで遊んでたなんて、
どんなにうまい言い訳も白々しく聞こえそう。
それなのに、佐野先生はクリスマスの約束を半ば無理やり取り付けて、
どこかへ行ってしまった。
断るすきも与えられず、あたしは仕方なく、
クリスマスの今日に佐野先生と会うはめになったんだ。
「しぶってた割にはおしゃれしてるんだ」
信号待ちの間に佐野先生にのぞき込まれて、ドキドキした。
「きっ…、気のせいだよ!」
そんな強がりを言ってみても、佐野先生の言葉は図星だったので、きっと説得力がない。
お気に入りのクリーム色の暖かいワンピースに、キャラメル色のコート、
奮発して買ったファー付きの茶色のブーツ、
胸もと近くまで伸びてきた髪の毛は丹念にコテで巻いて、顔には普段しないお化粧を少し。