先生なんて言わせない
砂浜に降り立ったとたん、ヒールのあるブーツだったため、砂に足をとられてしまったんだ。
転ぶと思った瞬間に腕を引っ張られ、今は佐野先生の腕の中。
…………?
体が、動かない…?
あ、あれ?
もしかして、今、抱きしめられてる?
「あ、あの…佐野先生?」
「ん~、なんだ?」
と、返事しながらも、佐野先生の腕の力は弱まるどころか強まっていく。
「いや、あの、離して下さい」
さっきから心臓がバクバクいってて、おかしくなりそうだよ。
「せっかくふたりきりなんだから、もう少しこのままで」
佐野先生の甘いささやき。
顔を上げてみると、確かに誰も周りにはいなかった。
聞こえてくるのは、寄せては返すさざ波と佐野先生の息づかいだけ。