先生なんて言わせない

世界にはあたし達ふたりしかいないと錯覚しそうになる。



今なら。


今だけなら、素直になっても…。



先生の腕の中で、体を反転させ、向かい合った。



首が痛くなりそうなほど顔を上げれば、からまる視線。


やがて、佐野先生の瞳が近づいてくる。


あたしはそっとまぶたを伏せて待ち望んだ。



普段なら素直に受け入れることができないこと。


だけど、今なら。


今だけなら、あたし達はただの男と女だよね…?



むさぼるように口づけを交わしあい、やがて頭に、手に、足に、冷たい感触が――。



……冷たい感触?



やがて胸もともひんやりした空気にさらされて、とろけた意識は急速に覚醒した。



「ダ…ダメ!!」

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