先生なんて言わせない
佐野先生はさらにクスクスと笑った。
「寝ちゃうほど、俺の腕の中は気持ちよかった?」
ぼーっと音が出そうなくらいに顔が赤くなったと思う。
「きっ…気持ち良くないですから! 泣き疲れただけですから!!」
恥ずかしすぎて、本音を隠すように力強く否定した。
すると、先生はプッと吹き出した。
その反応がムカついて、じろりとにらむと、笑いを我慢したようだった。
佐野先生は赤信号で止まった時、ふと思い出したように、後部座席から何かを取った。
「本当はどっかでご飯したかったんだけど、目がはれてて嫌だろうから」
渡されたのはハンバーガーショップの紙袋。
「いえ、ありがとうございます!」
一緒にご飯を食べたり、どこかを見てまわったり。
そういうデートらしいこともしたかったけど、泣いた後の顔では恥ずかしい。