先生なんて言わせない

一抹の不安を感じながら再び鳥居をくぐろうとしたら、

他の参拝客の足が遠くに見え、あたしは顔を上げた。



「…………ッ!?」


その瞬間、息が止まった。



あたしの視線の先にいたのは、なんと佐野先生と樋渡さんだったから。



「あら、高村さん?」


樋渡さんが佐野先生の左腕に自分の右腕をからめながら、あたしに声をかけた。



その光景を見て、あたしの心臓はバクバクうるさく鳴っていた。



…どうして?


何で?



ここにいることよりも、樋渡さんとふたりでということにあたしは動揺していた。



腕を組むふたりはまるでカップルのようだ。


それに、あたしとは誰かに見られたらいけないからと県外でのデートだったのに、

樋渡さんとはこんな学校の側で?

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