先生なんて言わせない

├ そのまなざし


「やっぱり無理~!」



百人一首大会が明後日に迫ったその日の放課後、あたしは教室でうなっていた。


手には百人一首の本が握られている。



「えーと、花の色は――、ああー、もうわかんないよ~」


必死に覚えようとしてるんだけど、なかなか覚えられないの。



ひとりでだから、余計に集中出来ないのかな。


でも、誰かに相手してもらうにも、友達は皆帰ったよね。



「――そうだ、佐野先生!」


ひらめいて、うつぶせていた体を起こしながら、声を上げた。



「…って、今は佐野先生に会いたくないなぁ」


再び顔を机にくっつけた。



もし、また樋渡さんと一緒のとこを見ちゃうとショックだよね。


それなら、会わない方がマシかも。


あたしって意気地なしだよね…。



「あ、安藤先生」

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