先生なんて言わせない
あたしはコクリとうなずいた。
やるからには、頑張るんだから!
「はい!」
樋渡さんの甲高い声が響き渡り、一枚の札が彼女の手におさまっていた。
また、取られた。
あたし達は順調に勝ち進み、とうとう決勝戦まで来ていた。
つまり、どうあがいても、これで賭けの勝敗が決まる。
それなのに、あたしはなかなか札を取ることが出来なかった。
「天つ風――」
安藤先生の札を読む声が響いた。
あ、これって目の前にあるヤツだ。
安藤先生と一緒に覚えた「乙女のすがた」の札が目の前にあり、あたしは手を伸ばした。
しかし、
「はい!」
響き渡った声はあたしのモノではなく、一歩早く動いた樋渡さんに札をかすめ取られていた。