先生なんて言わせない

あたしは空を切るはめになった右手で拳を作るとギュッと力を込めた。



悔しい。


バレンタインに告白したいわけじゃない。


だけど、樋渡さんが告白して、それを佐野先生が受け入れるのかと思うと、

胸が張り裂けそうだった。



あたしって、こんなにも佐野先生が好きなんだ。


なんとしても樋渡さんが告白するのを防ぎたいほどに。



安藤先生への返事をどうしたらいいのかなんて、そんな悩みはいとも簡単に解けていた。



あたしは佐野先生が好き。



「ハイ!」



だから、今は通りあえず札を取り続けるしかない。






無我夢中で取り続け、やがて試合は終わった。



「それじゃあ、各自取った札を数えて」


安藤先生の声を合図に皆が数え出した。

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