先生なんて言わせない

「…けっ…こん…？」



安藤先生が何を言っているのか、頭が着いていかなかった。


ただ、このまま流されてはダメだと、とっさに左手を後ろに引いていた。



まるで、せまり来るリングから逃げるかのように。



――結婚？


何、それ？



まだまだ無縁だと思っていた。
だって、あたしはまだ15歳。


子供だよ。



でも、３月の誕生日で16歳になれば、結婚できる歳なんだって、

現実を突きつけられた気がする。



あくまで前提になのに、その重い二文字の言葉に、あたしは混乱していた。



ただひとつわかることは『あたしは佐野先生が好き』ということ。



「あたしは…、もう…好きじゃない」


何とか声をしぼり出して、教室を飛び出した。