先生なんて言わせない

かすむ視界の中、あたしは無我夢中で走った。



そして、

「きゃっ」

誰かにぶつかった。



「…高村?」


上から降ってきた声に、あたしは固まった。



聞き間違えるはずがない。


あたしの大好きな声だ。



うつむいたまま、小さな声で「すみません」と言うと、再び走り出した。



すがりつきたい。



でも、他の人を思って泣いてる姿なんて、とても見せられないよ。




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