先生なんて言わせない
├ 反則チョコ
2月14日。
きっと一生忘れられないバレンタインデー。
その日は、朝からソワソワしていた。
買ってしまったチョコがカバンの中に入っている。
大人向けのお酒の入ったチョコ。
賭けに負けたあたしが渡してはいけない反則のチョコ。
本当は渡してはいけない。
そんなことはわかってるの。
それでも、渡したい。
伝えたい。
せめて、名前のないチョコを佐野先生の机に置くだけでも…。
「よし!」
あたしは意を決して立ち上がった。
辺りを見回し、樋渡さんがいないことを確認して、チョコをカバンから取り出した。
時計に目をやると、針は12時35分を指していた。
昼休みは13時まで。