先生なんて言わせない
あたしはそれ以上は見ていられなくて、きびすを返すと、教官室前の階段を勢いよくかけ降りた。
次の授業が何かとかどうでもよくて、ただひとりになりたかった。
ひとりになれる場所を求めて、あたしは走り続けた。
バタンッと勢いよく扉を開けたその先は屋上だった。
冬だというのに清々しいくらいの青空が飛び込んできて、
あたしの唇にしょっぱい味が広がった。
「…あ…あれ? しょっぱい…雨が…降ってる…よっ…」
そうつぶやく間にもしょっぱさはどんどん広がっていく。
甘くしようと持っていたチョコを一粒口に含んだ。
「…苦ッ…」
口に広がるのは大人の味。
キツイお酒の苦さだった。
でも、不思議と後から後からしょっぱさが込み上げてくる。