先生なんて言わせない
「…佐野先生?」
「…おまえ、自分が今どんな状態かわかっているのか?」
「…………?」
どんな状態?
そういえば、体がやけに重たい。
「39度の熱があるんだ。この解熱剤を飲みなさい」
佐野先生はそう言うと、サイドテーブルに置いてあった水の入ったグラスと錠剤を差し出した。
ゴクンとそれを飲み干すと、佐野先生にたずねた。
「どうして佐野先生の家にいるんですか?」
「ん…、おまえに用があって捜していて、屋上で見つけたんだ。
熱あるし、車借りておまえの家まで連れて帰ったんだが、ご家族は不在でな。仕方なく俺の家に連れて来た」
「あ…、今日は母がパートで遅くなる日です」
「らしいな。さっき連絡が取れてうかがった。
親御さんには様子が落ち着いたら送って帰ると言ってるから、薬が効いてくるまで寝てろ」
横になったあたしの頭を、佐野先生が優しくなでてくれるから、すぐにまぶたが重くなった。