先生なんて言わせない

ふと目覚めると、目の前に佐野先生の優しい微笑みがあった。



「佐野先生?」


「起きたか。これで熱計れ」


佐野先生がそう言いながら、体温計を差し出した。



熱を計ろうとして、あたしは息が止まった。


「……ッ」


「どうした?」



あたしの異変に佐野先生が気づいたようだった。



「…服」


あたしはようやく一言だけ声を漏らした。



佐野先生はそれだけであたしの言いたいことがわかったようで、バツの悪そうな顔をした。



「すまない。汗をたくさんかいていたから、着替えさせたんだ」



先生の言う通り、あたしは制服姿ではなかった。


佐野先生の大きな黒いTシャツを着ていた。

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