先生なんて言わせない
遠目だからはっきりとはわからないけど、樋渡さんが笑ってる気がする。
佐野先生は樋渡さんの想いを受け入れたの?
『俺と結婚してくれないか?』
あれは、あたしをからかっていただけ?
足元が崩れ落ちるような、そんな感覚におちいったあたしはペタンとその場に座り込んだ。
やっぱり、先生なんて好きになってはいけなかったの?
「どうした?」
ふと話しかけられて、ゆっくり顔を上げると、のぞきむように安藤先生が立っていた。
その顔を見た瞬間、我慢していたモノがボロボロとあふれ出した。
「大丈夫か?」
学校なんてことを気にもせずに、あたしは手を伸ばして、安藤先生の胸にすがった。
安藤先生も腰を下ろして、あたしの背中を優しくさすってくれた。