先生なんて言わせない
樋渡さんの言葉を呆然と受け止めた。
佐野先生があたしを裏切っていたわけではなかった。
それなのに、信じ切れなかった。
あたしを好きって。
結婚したいほど好きって言ってくれたその言葉を、一番に受け止めなきゃいけなかったのに。
涙を止め、キリリと前を見すえた。
「安藤先生、ごめんなさい。あたしはそれを受け取れません」
ペコリと安藤先生に頭を下げると、走り出した。
樋渡さんとの話が終わって、いつの間にかどこかへ行ってしまった佐野先生を捜して――。