先生なんて言わせない

どうしてだろう。



いつも、いつも、佐野先生の温もりが心地いい。


その心地よさにまた少しの勇気をもらって、あたしは口を開いた。



「あたし、わからなくて。佐野先生がどうしてあたしを好きかわからないから、不安なんです。

信じていいのかわからないんです。だから、あたしと佐野先生の出会いを全部教えて下さい」



涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、佐野先生の瞳を見つめた。



「…ヤバい」


佐野先生はそう言って、右手で顔を隠した。



「泣き顔がヤバい。そんな顔させたくないのに、泣かれるとドキドキして、今、絶対に顔が赤い」



「は?」



あたしは眉間にしわを寄せながら、佐野先生の顔をのぞき込むと、

「見るな」と言った佐野先生に抱きすくめられてしまった。



「佐野先生って泣き顔フェチ?」

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