先生なんて言わせない

佐野先生の胸の中でたずねた。


人の泣き顔見てドキドキするって何?



「違うよ。けど、おまえを好きになった時も、おまえは泣いていたから」


それを聞いて、あたしはドキッとした。



あたしが泣いてた?


佐野先生の前では泣いてばかりだけど、昔は人前では泣かなかった。



というか、いつもは泣けない。

我慢しちゃうの。



でも、たった一度だけ、入学式前に外で大泣きしたことがあった。



「――もしかして」


「うん、今思うと高村が安藤先生と別れた日だと思う。

未成年のくせに、公園でやけ酒飲んでいたよな」


すごく悲しくて、その日だけでもなんとか忘れたかったの。



「ボロボロ泣きながらお酒飲んでる女の子が、今にも壊れそうで、放っておけなかった。

俺が守りたいと思った」

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