先生なんて言わせない
「あ…あれ? じゃあ、次の日目覚めた時にいた、見知らぬ部屋って佐野先生の部屋?」
「そう。目覚めたらおまえがいなくて、悲しかったんだからな。
それからも、おまえの泣き顔を忘れられないし、おまえのことを考えたらドキドキするし。
おまえに惚れてたみたいだった。
四月に再会しても、おまえは何も覚えてなくて、かなり傷ついたんだからな」
佐野先生はそう言いながら、あたしを抱きしめる腕に力を込めた。
「ご、ごめんなさい」
「ん。もういいから、だから、俺のモノになってくれ」
佐野先生の胸を押して、体を離した。
そして、一直線に先生の顔を見つめる。
瞳をそらさないように。
想いをにごさないように。
「あたしも佐野先生が好き。先生と一緒にいたい。
そのために結婚が必要だっていうなら、あたしは佐野先生のモノになりたい」