先生なんて言わせない
昔、そう決めたの。
だから、きっと、佐野先生への想いも気のせいだから…。
心にカギをする。
先生に開けられないように。
まさか、そのカギが簡単に壊れてしまうような出来事が待ち受けているとも知らずに――。
「おはよう、高村」
佐野先生とは昇降口で別れて、下駄箱で上履きに履きかえていると、後ろから話しかけられた。
「あ、鷹井くん、おはよう~」
鷹井くんもあたしの横に並んでクツを履きかえ、そのままふたりで教室に向かった。
宿泊研修の頃が嘘みたいに、あれから鷹井くんが裏の顔を見せることはなかった。
あの後、ちゃんと謝ってくれて、さわやか好青年に戻った鷹井くんとは友達関係が続いている。
「そういえば、今日から産休代理の先生来るんだよな?
慶太が美人な女の先生がいいとか騒いでたけど」
あたしは思わずニヤッと笑ってしまった。