先生なんて言わせない

他の先生は皆授業に出ているのか。


ふたりきりの教官室にあたしの声がぽつりと響いた。



「聞いてほしいのか?」


今度は佐野先生の低い声が。


だけど、あたしは答えることができなかった。



どうしたいの?


自分の気持ちがよくわからない――。



「仕方ないな、聞いてやるよ。その代わり、後でお礼をたっぷりもらうけどな」


そう言って不敵に微笑んだその顔を見ても、嫌な気はしなかった。



やっぱり、聞いてほしかったのかもしれない。



そして、あたしはゆっくり話し出した。


昔の恋の話を――。







あたしと安藤先生が出会ったのは、去年の夏のこと。


塾の夏期講習でだった。



塾の講師と生徒。

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