先生なんて言わせない

塾に通いさえすれば、誰にでもあるような出会い。


ただひとつ、違ったのは、あたしが安藤先生にひと目惚れしたこと。



先生っていうほど年上には見えない、可愛らしい笑顔に、あたしのハートはまさに打ち抜かれたのだ。



それからのあたしは積極的だったと思う。



当時は怖いものなんてなかったし、相手が先生っていってもたかだか塾の講師。


何の問題もないと思っていた。



だから、毎日のように安藤先生に好き好き言った。



彼から「負けたよ、つきあおう」って言われたときは、ものすごくうれしかった。


皆には秘密のつきあいだったけど、重ねたデートの日々は、誰にも言えないつらさ以上の幸せをくれたよね。



安藤先生なりのケジメだったのか、キスまでの関係だったけど、

千沙って呼ばれる度に、愛をささやかれてるって思えた。



でもね、そんな幸せは、長くは続かなかったんだ。


わずか半年ほどで、もろく崩れさった。

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