先生なんて言わせない
何のことかわからない。
しかも、先生に手首をつかまれて、動けません。
「話きいてやったんだから、お礼は?」
体を後ろに引こうとしたけど、腰を浮かした先生の顔が近づき――。
ちゅっ…。
唇に温かい感触がした。
それはほんの一瞬で離れ、あたしはすぐに教官室から飛び出していた。
動揺を佐野先生に気づかれないように。
だって、いつもの強引なキスとはあまりに違って、とても優しかったから…。