先生なんて言わせない
あたしの心臓はバクバクしていて、止まらない。
席が目立たない後ろの方でよかった。
そうこうするうちにチャイムが鳴り響き、ガラッと前のドアが開いた。
安藤先生の姿が飛び込んでくる。
塾で見慣れたはずのスーツ姿は、やっぱり童顔の彼には似合わず、思わず笑いそうになった。
その瞬間、目があった気がして、ドキッとした。
「今日は全員そろってるね。この前いなかった人もいるから、もう一度自己紹介しておくよ。
オレは進藤先生の産休代理で安藤瞬。よろしく」
安藤先生は教卓の前に立ったかと思うと、自己紹介を始めた。
あたしのためだ。
あたしが前の授業をサボったから。
安藤先生のいつも通りの極上の笑みがまぶしくて、あたしは思わず下を向いた。
ヤバい。
その笑顔を見ると、あたしの中の何かが変わりそうで怖い。
でも、逃げないって決めた。