先生なんて言わせない
「高…千沙?」
「…え!?」
いきなり名前を呼ばれて、あたしは我に返った。
「な…何!?」
「…何って、今どっかトリップしてただろ? 何度も呼んだんだけど」
安藤先生が呆れた顔をして言ったかと思うと、今度はふんわりと微笑んだ。
「変わらないな。そういう、すぐどっかにトリップするとこ」
「だって、たった三カ月だもん。そんなにすぐ変わらないよ」
先生の笑顔を見たくなくて、残り少ないココアを見ていた。
でも、次の言葉で、パッと顔をあげた。
「…そうだな。オレの気持ちも結局変わらなかった」
すると、安藤先生の真剣な瞳がそこにあった。
もう笑ってはいない。
あんまりじっと見てくるから、手に汗を感じた。
「オレはまだ千沙のことが好きなんだと思う」