先生なんて言わせない
「…ごめんなさい」
あたしは小さな体を、さらに縮こまらせた。
周りが見えなくなって、わざわざ側にいてくれたことに気づかないなんて、
自分が情けなくなる。
それにしても、この人はここまであたしのことを心配してくれるなんて、なんていい人なんだろう。
ちょっとえらそうな物言いが気にはなるけど。
その人は、はぁっとため息をついた。
「まぁいいか。それより駅に着いたぞ」
そう言うなり、あたしの右手首をつかんで歩き出し、電車を降りた。
そのままズンズン改札へと進んでいく。
どこまで一緒にいてくれる気なんだろうか。
引っ張られて小走りになりながら、思いきって声を上げた。
「あの!」
振り返ったその人の視線があたしにとまり、あたしは顔が赤くなった。