先生なんて言わせない
だって、中間テストの平均って49点なんだから…!!
放課後、ショートホームルームが終わると、皆にサヨナラも言わずに教室を飛び出した。
向かうのは体育教官室だ。
「佐野先生!」
全力疾走して、勢いよくドアを開けた。
「ん? どうした、高村?」
佐野先生は特に驚いた様子でもなく、さわやかな笑顔で返事をした。
それを見て、なぜかそれまでの勢いをなくしてしまった。
「あ、あの…さっきの」
佐野先生はタバコを吸いながら聞いている。
よく見ると教官室に他の先生はいなくてふたりきりだ。
ここで佐野先生に泣きついてしまったことを思い出した。
こんな風にふたりでいると、あの時の佐野先生の胸の感触まで思い出してしまいそう。
そんな自分が嫌だ。