先生なんて言わせない
「…で、ここにx=2を代入して…」
放課後の教室には鷹井くんの声が静かに響いていた。
それを聞きながら、一生懸命ノートの数式を解いていく。
「あっ、できた!」
「ん。正解!」
テスト前はあたし達以外にも、放課後に残って勉強している人が多い。
クラスメートが何人かいる。
だけど、勉強を進めていくうちに、いつの間にかあたしと鷹井くんのふたりきりになっていた。
「あれ? 皆帰っちゃったの?」
あたしはキョロキョロ教室内を見回した。
「みたいだね。もう6時だし、俺達もそろそろ帰ろうか」
「うん」
と返事をした時、教室の前のドアが音をたてて開いた。
「まだ残ってるの? もう遅いから帰りなよ」
入ってきたのは安藤先生だった。