先生なんて言わせない
「今帰るトコです…!!」
前に安藤先生のところから泣いて逃げてから、
授業以外でまともに顔を合わせるのは今日が初めてだった。
あわててノートと教科書をカバンに戻そうとして、
ふでばこを派手な音を立てて下に落としてしまった。
あたしが動くより早く、いつの間にか側まで来ていた安藤先生がそれを拾ってくれた。
「…ありがとうございます」
安藤先生から受け取りながら、お礼を言った。
もう安藤先生への想いは忘れたはずだった。
それなのに、手と手が触れ合うだけでドキッとしてしまう。
そんな自分が嫌で、逃げるように教室を飛び出した。
とにかく早く学校から離れたくて、下駄箱に走って向かっていた。
ところが、誰かに腕を後ろに引っ張られ、「きゃっ」と声をあげた。
「な…何? 誰?」