先生なんて言わせない
振り返った先にいる鷹井くんを見て、はじめて彼を置いてきてしまったことに気づいた。
「今さ、すっかり俺のこと忘れてたよね?」
「あ、う…ごめッ…」
あたしはうまく言葉にすることができなかった。
「初めて安藤先生が来た日も先生見て、俺を置き去りにしたんだよ。覚えてる?」
「………ッ」
あたし、今、初めて気づいた。
そういえば、あの時も鷹井くんがいたんだ。
安藤先生のことで頭がいっぱいで、あの後何も聞かれなかったから、
すっかり一緒にいたことを忘れていた。
「ねぇ、安藤先生って高村のなんなの。ただの知り合いじゃないんでしょ?」
あまりに鷹井くんが真剣な瞳をしているから、あたしはそらすことができなかった。
つかまれている手首が痛い。
ごまかすことはできない。
なぜか、そう確信して、あたしはつぶやいた。