モノクローム
「最初は冗談のつもりだったんだ…」


「冗談?」




話が飛んだり前後したりするせいか、秋は確認するように尋ねる。
俺は「そう」と応え、タバコを消した。

冗談だった─


いよいよ彼女とも終わりかけかな、なんて思ってる時、リリー…いや、その時はもう秋だ。
秋が唐突にメールで「逃げ出したい」と送って来て、あぁ、こいつも周りの女と一緒だなぁって思って、勝手な想像を押し付けてさ…

皆、最初だけはいい事言うんだ。
「一緒に居たい」とか「このまま二人で逃げたいね」とか。
彼女も口では「同棲したい」とか似たような事言ってたけど、結局全部出まかせだった。


まぁ、人のこと言えた口じゃないけどさ。
でも、自分なりにちゃんと好きだったんだ…

だから…




「秋には悪いことしたなと思ってる…」


俺は敢えて秋の顔を見ないで言った。
秋は俺の手を軽く握って、「それで?」と優しく尋ねて来た。



「そんで…」




秋に逃げたしたいって言われた時は結構驚いたけど、理由は幾つか知ってたし、その時は「からかってやろう」ぐらいな気持ちで考えてた。
だけど、途中から変な感情が出たりしてさ。

女なんて同じってヤツ。


だから、なかなか手錠が外せなかった。

すげぇ自分勝手だけど…
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