モノクローム
そして、俺は秋を抱いた。
震える肩を包んで、何度も唇を重ねながら、忘れないように全てを目に焼き付けて行く。
冷たい肌、しなやかなライン、小さな手や爪の形、ペディキュアが少し剥げた足の爪やその形をゆっくりとなぞりながら、跡を残さないように優しく、温もりだけは残して繰り返す。
掠れる声
零れる吐息
指を絡めて耳元で囁く
───すき
微かに開く唇を塞ぐと、更に想いが強くなって止まらなかった。
止めようがなかった
名前を呼んで
見つめ合って
熱い息を重ねて
確かめるように、また名前を呼ぶ。
長い髪を撫でて、輪郭を辿りながら唇で指先が止まる。
淡く染まった頬に小さな水溜まりが出来た。
そのうち、水溜まりが分からなくなるくらい頬は濡れて、秋の顔は歪んでいた。
それは自分の涙だった。
おかしいな…
俺、なんで泣いてんだろ
「春…?」
「…ごめ……シャワー浴びて来ていいよ…」
やばい。
マジで止まんないし…
この手に、この身体に、この目に。
全てで感じた筈なのに、前よりも胸が痛む。
ふと見上げた窓の外には真っ白な雪が降っていた。