モノクローム

どんなに願っても、それが正しくなければ叶わない。


うっすらと雪が積もる東京タワーを見ながら、誰かが言ってたことを思い出した。

本当にその通りだった。
ほんの一瞬叶ったように見えただけで、知りたくもない気持ちに触れてしまった。
秋本人も気付いてない、奥底に在るひそかな気持ち。
だから、余計に自分を刻み付けたかった。


例え、叶わないと知ってても願っていた。

そして今も、それをひたすら願ってる。


多分、この先ずっとそれだけを願ってる。




「春…」


「ん?」


「シャワー…浴びたら?」


「ん…」




でも、それは絶対秋には言わないし、二度と言葉にしない。

だけど、その代わり…




「春?」



「え?…あ、わり…ぼーっとしてた…シャワー…浴びてくる」





その代わり、最後に一つだけ秋に残して幕を下ろそうと思ってる。


それが自分に1番相応しい終わり方だから。
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