モノクローム
シャワーから戻ると窓の外は既に朝に変わって居た。
秋も眠った様子で起きる気配はない。
俺はタバコを一口だけ吸って、昼まで眠る事にした。


なるべく今までの事は考えないように、明日の事だけを考えて…





「おはよう…」


「…おはよ」




ふと瞼を過ぎる気配に目を覚ますと、窓の側で秋があの顔で笑っていた。
その顔が背中越しの夕日に映えて、とても綺麗に見える。

その時、初めて思った。


時間が止まればいいのに…



瞬きも惜しむくらい秋の姿を見て、静かに目を閉じ、ゆっくりと開ける。
そこには変わらず微笑む顔があって、時間なんて止まる筈もなく



「飯…食いに行こっか」


「うん」



ただ、時間を進めるしかない。


二人で東京タワーが見える席に腰を下ろし、それを眺めながら食事をした。
外では相変わらず雪が降り続いて、街や景色を白く染めている。





「あのさ…」


「ん?」


「俺、生まれたの秋じゃん…」


「うん?」



特に話す事も見つからないまま、ほぼ同時に食事を終えた後、酒を飲みながら俺が話し掛けると、秋は大袈裟に首を傾げる。

一瞬、話題を変えようか迷ったけど構わずに続けた。
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