モノクローム
「俺の親父がさ、付けてくれたんだ。春って。

秋の11月に生まれたのに何で春なんだよって訊いたらさ…

お袋が俺を産んだ後、雪を見てさ、真っ白な花びらみたいだって言われて、俺に春って付けたんだって。女でもないのにさ、いい迷惑…

その後、春の季節が来てお袋は死んだ」




俺が話し終えると、秋は黙って窓の外を見上げた。
相変わらず自分の説明の下手さに呆れてるような、そんな顔に見えた。




「そろそろ部屋に戻ろ」


「うん…」




名残惜しそうに空を見上げてる秋に声を掛け、手を取ってその場を後にした。

部屋に戻っても秋は窓辺に座り、ただ空を見上げたまま黙り込む。
一緒になって見上げてみたけど、そこに何を見てるのか自分には分からなかった。




「タバコ買ってくるわ…」



秋にそう言った後、レストランの近くにある自販機まで行き、タバコを買ってその場で吸いながら、ある人に電話をした。


冷静かつ淡々に用件だけ伝えて電話を切り、遠目にある東京タワーを眺めて願った。





秋が幸せになれますように。





暫く眺めてから部屋に戻り、直ぐベッドに入って眠った。

その後、秋も諦めたようにベッドに入って眠った。



長いようで短い日々が終わって行く─
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