モノクローム

やがて外は茜色に染まり、窓の縁には雪が積もっていた。
それでも雪は止む事もなく、しんしんと降り続く。



橘さんは最後の一滴までお茶を飲み干した後、眼鏡をポケットに戻しながら短い息を吐き、「分かりました」と言って広げていたメモ帳を閉じた。

私の肩を抱きながら澤田さんがドアの前まで行き、ノブに手を掛けると橘さんが声を掛けた。



「最後に…もう一度訊きますが、本当に何もされてないんですね?」



「はい」


「…そうですか。すいませんでした遅くまで。もしかするとお宅に訪ねるかもしれませんが、その時は宜しくお願いします」



橘さんがそう言って軽く頭を下げると、澤田さんは「自宅まで送って行きますので」と言ってドアを開ける。

私は「一人で帰ります」と告げ、その場を足早に去った。



外に出た瞬間、冷たい風が体を刺すように通り抜け、今まで在った温もりを奪ってゆく。

一面に広がる白い世界から目を逸らし、宛てもなく警察署を見渡した。




春…

どうして、こんな事したの?




そんな想いが届く訳もなく、私は迎えに来た夫に手を引かれ、元の場所へ戻された─
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