モノクローム
いっその事、ストーカーと言う罪も認めれば良かったのかもしれない。
そうすれば二度と近付けないし、二度と会う事も出来ない。
でも、それを認めてしまえば根掘り葉掘り、ある事ない事訊くのが刑事の仕事だ。
一歩間違えば被害者が悪くなる可能性だって出て来る。
その可能性は、この刑事なら有り得る事だ。
何と言っても俺の話しなんて全然聞いてないし、調書から憶測して作り挙げてるんだから…
橘さんは灰皿の上で燻っていたタバコを押し潰しながら言った。
「では、君は自己満足の為にたまたま目に付いた被害者をさらい、監禁をした上、逃亡を謀ろうとしたが自己満足に達した為、自首した。それで間違いないかね?」
「はい」
俺がそう答えると、若い刑事が苛立った様子で頭を乱暴に掻いた。
橘さんはデスクに眼鏡を置き、疲れたように目頭を押さえて深い息を吐きながら言う。
「今日はこの辺にして置こう…。また明日、改めて訊くよ」
橘さんは若い刑事に「後は頼んだ」と言って取調室を後にして行った。