モノクローム
暗がりに目が慣れた頃、側から何とも悩ましげな声が聞こえて来た。
今も尚、自由の無い私には耳を塞ぐ事も、戸を開けて抗議する事も出来ない。
かろうじて使用出来るのは、口と足のみ。
少し無理をすれば、スカートのポケットに入った携帯に手が届きそうだった。
でも、行動に移すのは面倒くさかった。

面倒と言うより、私に頼れる人なんて誰一人として居ないだけで、警察と言う二文字も頭の隅でぶらぶらと踊っているだけ。


普通なら、どんな事をしても逃げるのだろう。
《普通の人間》ならば、その感情があって当然だ。
だけど、自分にはその感情が欠けているらしい。

多分、随分前から欠けていたのだと思う。


逃げ出す口実になれば、何だっていい。私は、監禁前にずっとそう考えていた。
ある人に、逃げ出したい。と言った事さえある。

今ある現状に、不満は十分にあるが、それでもいいや。と言う感情さえ芽生え始めてる。
そんな自分は《普通の人間》の枠を超えたのかもしれない。


シロは何を考えてるんだろう?
ふと、思った。


あの台詞

「ホントに殺す訳ないじゃん。ここ日本だよ?」


暫く考えた。

あぁ、そうだ。
彼にとって、これはゲームだ。
どこまで自分が捕まらないか、それを確かめる為の下らないゲームだ。
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